理学療法士の勉強メモ

このブログでは理学療法士として働く私の日々の勉強や疑問、はたまた趣味等を綴っていきたいと思っています

運動学習とは?強化学習を意識してFBを行おう!

こんばんは。

 

演題登録が完了した学会や院内での新しい研究計画発表が近しくなり、

心地よい忙しさに追われている最近です(笑)

 

さて、本日は以前に挙げた応用行動分析学と重なる部分は少しあるかと思いますが、

日々の臨床において重要な運動の学習について纏めてみたいと思います。

 

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目次

 

 

□運動学習とは

簡単に言うと一つの運動技能を獲得するまでの流れをいいます。

私達セラピストも臨床を通じて姿勢制御や歩行の運動等を繰り返し行うことで

運動学習による動作の獲得を目指すと思います。

 

しかし、運動学習の段階については客観的に評価することが難しく、

また、学習過程に複雑なメカニズムもあり、

普段日常的に行っていることどのような意味合いを持っているのか。

更に学習を強固なものにするためにはどのようにすればいいのか等

正直曖昧な部分があります。

 

□二つの運動学習

運動学習には二つの習熟方法があります。

一つは大脳基底核を基にした連続学習(強化学習)

二つは小脳を基にした適応学習(教師あり学習)があります。

 

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学習開始の段階では脳の機能局在が分かれることはありません。

しかし、学習が進むにつれて、学習の方法によって

基底核、小脳へと分かれていくのです。

 

・連続学習(強化学習)とは

大脳基底核が中心となり、記憶をもとに運動の順序等を選択し、

報酬に基づいて記憶してきます。

 

例えば、50m走で効率的なフォームでの運動を学習したい際に

タイムという結果を得る為の学習過程であるといえます。

 

・適応学習(教師あり学習とは)

小脳が中心となり、感覚入力を元に運動のトライ&エラーを行い、

一連の運動を運動の発現前に修正し、

運動誤差を修正していく学習です。

 

□連続学習(強化学習)を効率的に行うには

まずは提供する運動の難易度を設定する必要があります。

簡単すぎる運動では患者様が成功体験の達成感を得られにくく、

難しすぎる内容ではそもそも成功ではなく、失敗の経験ばかりを得てしまいます。

その為に適切な運動課題の設定が重要になります。

運動課題については患者とその日の運動目標等を共有するのも一つの手だと思います。

 

次に適切な運動課題の設定が出来れば、

実施した運動に対して賞賛等正のフィードバックを提供し、

その運動過程を強化していく必要があります。

運動に対して報酬が確認できると基底核ドパミンが得られます。

過去の報告ではサル等の実験では運動の報酬が得られた場合、

更には運動の報酬が得られると予測された場合にドパミンの放出が確認されています。

 

□高齢者と健常者の違い・・・

若年者であれば、運動を学習する際に

上記で記載した連続学習の過程の報酬等がなくても、

運動の学習が得られることが多いです。

それは何故かというと若年者では適切な感覚のフィードバックが起こり、

以前の運動の経験を基に運動のトライ&エラーを繰り返すことで

適応学習(教師あり学習)による学習が行われているからです。

 

しかし、高齢者は加齢に伴い、視覚や体性感覚等の鈍麻が起こります。

更に脳卒中の方では視床領域等の感覚障害がなくても

固有感覚でのフィードバックが減少し、適応学習を適切に行うことが困難になります。

 

逆に言えば、感覚さえ適切に入力されれば、適応学習が可能になります。

 

□まとめ

私達セラピストは高齢者の方が感覚の入力阻害により適応学習が行われにくく、

連続学習での学習がメインになっていることを把握しておく必要があります。

効率的な運動学習を進める為に

一つ目は

連続学習による学習を促す為、運動の難易度やフィードバック入力を考えること

二つ目は

適応学習が困難といっても小脳自体の問題がなければ、

固有感覚等適切な感覚入力を促すことで適応学習を行うことが出来る為、

感覚入力にも重きを置く必要があります。

 

参考文献

久保田競ら,学習と脳,サイエンス社

石井信,強化学習と脳における報酬系の情報処理,Bussei Kenkyu
大脳基底核の機能,嘉戸直樹,関西理学,5:73‐75,2005

Schultz W et al,A neural substrate of prediction and reward.Science,

1997 Mar 14;275(5306):1593-9