膝関節の痛み! 膝痛に大きく関与する膝蓋下脂肪体とは?
こんにちは。
近頃、コロナウイルスの問題によって大変なことになっていますね。
私も今年の春に控えていた結婚式をどうするかや
3月に演題発表を行う予定であった学会が度々中止になってしまい、
頭を悩ませています。
さて、今回は膝関節の疼痛に大きく関与する膝蓋下脂肪体について
纏めてみたいと思います。
膝蓋下脂肪体は膝OAの方や外傷等により問題をきたすことで
膝関節の疼痛に大きく関与していると近年言われており、
リハビリを行う上でも生活を行う上でも非常に重要な組織であると思います。
目次
膝蓋下脂肪体とは
膝蓋下脂肪体(Infrapatellar Pad:以下IFP)は膝蓋骨周囲を満たす組織で
豊富な血管支配・神経支配を持つとされている。
IFPは関節包の内側や滑膜の外側に存在し、膝蓋靱帯深部の間隙を埋め、
関節運動に伴い機能的に変形することで関節内の内圧調整に関与する。
□膝関節伸展時には
脛骨大腿関節間から膝蓋靭帯に流れるように移動する。
□膝関節屈曲時には
膝蓋靭帯部から脛骨大腿関節部脛骨大腿関節間に流れ込む。
屈曲については屈曲0°~20°又は深屈曲時に大きく問題が生じるとされています。
この上記の動きが長期間の安静や炎症、膝関節変形等により
柔軟性の低下やIFPの動きが変形により阻害されることで
伸展時にインピンジメントを起こしたり、
屈曲時に上手く、IFPの柔軟な変形や流れ込み・内圧上昇により
膝前面の疼痛をきたしたり、関節可動域制限につながるとされている。
このIFPの問題により立ち上がりや階段昇降時など
CKCの状態での膝の曲げ伸ばし時に
膝前面に疼痛をきたす方が非常に多い印象があります。
膝蓋下脂肪体の評価方法
膝蓋下脂肪体の障害の程度の評価方法ですが、
一番はやはり下記のようにエコーやMRI等により鑑別を行うのがbestです。
しかし、日常的にそのような機器の使用はできません。
そこで私が指標にしているのは
まず上記のようにCKC下での膝屈伸時の疼痛の評価を行い、
次に膝蓋骨の位置の評価を行います。
IFPに問題を抱えた方の多くはパテラの内側や上下方偏移をきたしています。
また、IFPへ圧刺激を加えたり、圧を加えたまま膝関節伸展を行う等も重要です。
IFPは前方から見ると膝蓋靭帯の側方に位置しており、
その部分が隆起しているのか・圧痛の有無・圧を加えたまま伸展し、
疼痛が誘発されるか等を確認します。
これは伸展時に膝蓋靭帯方向へ流れ込む組織が柔軟性低下等で移動が制限されていると
その組織を抑え込むことでさらにインピンジメントが生じ、
疼痛が誘発されると考えています。
膝蓋下脂肪体に対するアプローチ
IFPへのアプローチとして
モビライゼーションやテーピングがあります。
□モビライゼーション
パテラが外側偏移や上方へ偏移していれば、
対側を基準として元の位置へ誘導し、その中でIFPへのリラクゼーションを行います。
膝蓋靭帯の内側部が膨隆していたなら、奥へ流し込むように誘導したり、
パテラの位置を修正する為、
前後左右・斜めへパテラのモビライゼーションを行います。
この時、少しゴリゴリという感触があることが多いですが、
このゴリゴリという感触はIFPの柔軟性低下による物である可能性があります。
□テーピング
IFPへのテーピングとしてMcConnell式のテーピングが推奨されています。
➀膝蓋骨直上部分で内側から外側にかけてテーピング
➁膝蓋靭帯内側部から後内側へ向かってテーピング
③膝蓋靭帯外側部から後外側へ向かってテーピング
を行います。
この上記のテーピングによりIFPの持ち上げが確認され、
膝関節の膝蓋靭帯下部で可動性の制限のあったIFPや
内側又は外側に貯留していたIFPを適正な位置に補正し除痛に関与したと考えます。
また、テーピングによりパテラの位置の補正や膝関節伸展筋の出力向上がみられた
との報告もあり、膝関節OA等に対しても有効であると考えます。
まとめ
今回、膝蓋下脂肪体(IFP)について纏めてみました。
アプローチの紹介としてモビライゼーションやテーピングをあげましたが、
膝関節へのメカニカルストレスを減らす為に股関節周囲筋のトレーニングや
足部に対するインソール等のアプローチも重要です。
また、治療方法は一つではなく、個々の症例によって様々ですが、
今回のモビライゼーションやテーピング、他のトレーニングを併用することで
より高い治療効果を生み出すことが出来ると考えています。
また、テーピングにおいて優れているのは
セラピストによるHands onでの治療ではなく、
方法によってはHands offの治療へつなげていける可能性があります。
また、モビライゼーション等も力加減や行う位置・姿勢等正しく指導ができれば、
実際にアプローチを行わなくても患者自身で疼痛を管理していく事が可能であると
私は考えています。
膝関節の疼痛の方でIFPに問題を抱える人は本当に多いので
是非試してみてください。
引用文献
久保田大夢ら,ハンドボール選手に生じた膝前方部痛の解釈 ──膝蓋下脂肪体に着目して──,日農医誌67巻4号,528~532頁,2018.11
Jason L. Dragoo.Christina Johnson.Jenny McConnell,Evaluation and Treatment of Disorders of the Infrapatellar Fat Pad, Sports Med 2012; 42 (1): 51-67
村暁大.赤坂清和.泉美帆子,McConnellテーピングによる膝蓋骨内側偏位は膝関節伸展トルクを増加させる,理当療法学,特別号24,No.3