理学療法士の勉強メモ

このブログでは理学療法士として働く私の日々の勉強や疑問、はたまた趣味等を綴っていきたいと思っています

車椅子で「座るということ」

こんにちは。

理学療法士として施設・病院で業務にあたる方々が多いと思いますが、今回は車椅子について気になることがあったのでまとめてみようと思います。

 

始めに車椅子を使用している方々に対し、

     シーティングの提供していますか?

 

何故、こんな疑問を抱いたかというと少し過去のものになりますが、

2017年厚生労働省による診療報酬改定による疑義解釈資料が公表され、

姿勢保持や褥瘡予防のためにクッションなどの選定や調整を行うシーティングを

実施した場合、診療報酬に組み込んでよいという見解が示されました。

 

最近まで私はそんなこと気にもかけずに臨床にあたっていましたが、この一文を見たのちに改めて車椅子を利用されている方々の座る姿勢について着目してみました。

 

観察してみるとやはり

骨盤後傾、頸部屈曲し過ごしている方

座っているとお尻を前へ出してずり落ちてくる方 etc・・・

沢山の方々がいらっしゃいました。

このような姿勢で長い時間を過ごすと

腰痛・変形・褥瘡・嚥下機能障害・心血管,腎臓,呼吸等に重大な身体的悪影響

等などを引き起こす可能性があります。

 

また、車椅子に関する書籍や文献の中で

〇施設・病院で多く使用されている座奥×奥行が約40×40㎝規格の車椅子は

 高齢者の身体寸法に合致していない1)

〇標準型車椅子の40×40㎝シートは身長175㎝程度に適合するとの見解がある2)

と報告しています。

 

車椅子利用者で身長175㎝以上の高齢者・・・

たくさんいますかね?多くの方は身長175㎝以下であり、報告されている規格に適合していません。

また、この適合のズレはご自身で座りなおせる方には大きな問題に至らないかもしれませんが、ご自身でしっかりと座れない方

具体的にはシーティング・コンサルト協会が奨励するHoffer分類Ⅱ~Ⅲの方々にとっては致命的となります。

 

※Hoffer分類とは

Ⅰ:上肢の支持なしで30秒以上座ってられる方

Ⅱ:上肢の支持があれば30秒以上座ってられる方

Ⅲ:上肢の支持がないと座ってられない方

 

ではどうすればいいのか?

車椅子の規格を調整できるモジュールタイプ?骨盤サポートクッションの購入?

対策はたくさんありますが、どれも施設や病院で導入するにはコスト問題があります。

 

一つ私が参考にしている方法を紹介したいと思います。

余っているウレタンマットやクッションを利用し、

       座底長-座面の奥行=4~5㎝に設定する方法です。

適切な座面の奥行きは座底長から4~5㎝減じて設定する3)とされており、

座っている際の臀部後縁から膝裏までの長さを座底長として測定し、上記の引き算にかけて設定します。

 

少し手間ですが、この方法で座り心地や姿勢の変化が報告されています。

また、ウレタンマットやクッションは比較的安価でコーナンなどに販売しており、大きなコストはかからないものです。

 

実際に行ってみると確かに姿勢が変化し、食事の際の姿勢が変わったり、以前のものより快適であるという声が聴けました。

 

でも他にも車椅子で調整すべきポイントはたくさんありますのであくまで一つの簡易方法ではあります。

 

 

そして長くなりましたが、このような疑義解釈が発表されているということはそれだけ車椅子を不適切な状態で使用されている方々がたくさんいて、黙認されているといった現状があるからだと思います。

 

リハビリに携わる方々は一度車椅子の確認をしてみるのもいいかもしれません。

又、車椅子を使用していて困っている方は一度参考にお試しください。

 

1))廣瀬秀行,木之瀬隆:高齢者のシーティング.三輪書店,2006.p63

2)木之瀬隆:老健介護保険福祉用具レンタルの課題.第2回福祉技術シンポジウム公演要旨集.2000.p62

3)君塚葵:車椅子・整形外科学会.義肢装具のチェックポイント.医学書院.2003.p287