理学療法士の勉強メモ

このブログでは理学療法士として働く私の日々の勉強や疑問、はたまた趣味等を綴っていきたいと思っています

治療にはここで差がつく・新人必見の応用分析行動学!応用行動分析学ってなに?

こんにちは。

今日はダブルワーク先のデイサービスで勤務している最中、

洗濯物を二人で畳んでいる高齢者夫婦の仲睦まじい姿を見て、ほっこりしました。

私も現在、新婚ですが年をとっても

いつまでも仲良い夫婦でありたいなと心底思いました。

 

さて、今回は徐々に知名度が広がってい応用行動分析学について

勉強してみたことを纏めてみたいと思います。

 

 

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応用行動分析学って何?

応用行動分析学とは環境と個人の相互作用として問題を捉える。

介入の方法としては、「環境を整える」という環境に働きかける方法と、

「適切な行動を学習する」「行動のバリエーションを増やす」という

個人に働きかける方法があります。

 

リハビリ場面においては動作障害の原因を認知機能や身体機能の問題だけでなく、

知識の問題技術の問題動機づけの問題から分析していきます。

進行性の病態であれば認知機能や身体機能の改善を図ることは難しいですが

知識や技術は学習によって習得させることができるとされています。

(引用:認知症に対する応用行動分析学的介入)

 

これはどういうことか。

3つの問題についてそれぞれ説明していきます。

 

応用行動分析学三つの視点

知識の問題とは

行動の手順が記憶できていないことによって生じる問題です。

記銘力が低下する認知症や重度脳卒中の患者様では、

学習していた意味記憶エピソード記憶が徐々に消失により

頻度の高い日常生活動作障害をきたします

移乗動作やトイレ動作など複雑な行動から形成される動作では、

この問題が生じやすいとされています。

知識の問題では、知識を提示することで動作障害が即時的に改善することがあります。

技術の問題とは

身体機能に問題がなく、知識があるにもかかわらず動作ができない場合は

技術の問題であるといえます。

例を挙げると椅子からの立ち上がりは単純な動作のように見えますが

幼い時には繰り返し失敗しながら習得した動作です。

片麻痺の方などが行う立ち上がり動作は健常者とは異なる技能が必要となります。

そのような場合は再び安定した支持基底面内に重心を

投射する技術を学ぶ必要があります。

 

動機づけの問題とは

 動作を行うにあたり大半の方は何故その動作が必要なのか理解できています。

しかし、認知症高次脳機能障害を合併した脳卒中の方は

その動作がなぜ必要なのか・あるいは動作ができないことを理解できないかもしれない

また、どのような感覚で動作を行ったのかを記憶することも困難です。

そのような状態で動作を行っても失敗する可能性は高いです。

また、その際に注意や𠮟責を受ける可能性もあり、

これは対象者にとって嫌悪刺激となり、動作練習を弱化させます。

また、介助者に対しても条件的な嫌悪刺激が定着し、

こうなると動作練習や介助に対しての拒否が生じていきます。

注意や叱責はイライラや緊張、不安等の感情を募らせ、

それらの情動反応は記憶に残りやすいです。

 

応用行動分析学の用語

プロンプト

手がかり刺激のことを指します。

対象者に与える刺激は口頭指示のみでなく、指差しやタッピング、

身体的教示、身体的ガイド等があります。

 

プロンプトフェイディング

適切なプロンプトを与え、徐々にプロンプトを減らしていく方法です。

 

シェイビング

エラーのない学習を促していく際に生じた不適切な行動は無視し、

適切な行動を誘導し、それに強化刺激を与えていく技法です。

 

認知症の方等への介入では指示従事行動が得られなくなる危険性が高く、

練習に伴う失敗や注意・叱責がその原因となるため、

成功や上達が体感できるエラーのない学習が介入の基本となり、

シェイビングが重要となります。

 

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実際の介入事例

認知症脳梗塞を罹患された方に対し、杖歩行を視覚的プロンプトを示した事例

認知症脳梗塞を患い、筋力等の身体機能は十分有しているにも関わらず

杖歩行の手順がバラバラな方に対して

ジェスチャー・口頭指示期

②視覚的プロンプト期

③消去期

のようにプロンプトの提示方法によって分類分けを行った。

➀では歩行訓練前に介助者がジェスチャーと口頭での動作手順の説明を行い、

動作中のエラーについては毎回、ジェスチャー・口頭指示で注意を促した。

②では動作手順を確認できるようにA4用紙記載し、確認していただく。

歩行中にはA4用紙が見えるように提示しながら動作を実施した。

③では視覚的プロンプトを消去し、動作の手順に誤りがないときは賞賛を与えた。

上記のような手順により対象者は杖歩行獲得に至った。

(引用:杖歩行練習に対する視覚的プロンプトの有効性)

 

高次脳機能障害を合併した脳梗塞の方に対する座位練習を行った事例

プッシャー症候群、半側空間無視、注意障害、運動麻痺等を

呈した重度脳卒中の方に対してターゲットを60秒間の座位保持とし、

聴覚・体性感覚のプロンプトを提示し、その後プロンプトフェイディングを実施した。

➀足底を接地させた座位練習中に非麻痺側の手掌を置く場所を手形等で示し、

60秒の秒数カウントを1秒ごとに後方から介助者が示し、練習を実施した。

座位保持が成功した際には賞賛を介助者・家族とともに行った。

 

60秒の座位保持が可能になった時点で

②手形のプロンプトを除去し、同一課題での練習

③秒数カウントを1秒ごとから10秒ごとのカウントにしての練習

➃カウントをなくし、時計のみを見える場所に提示し練習

⑤全てのプロンプトをなくした状態での練習にて座位自立に至った。

(引用:応用行動分析的技法を使用した座位訓練の効果 )

 

まとめ

如何に効率よく運動学習を進めていくかという感じでしょうか。

おそらく紹介した応用行動分析学とは経験を積んだセラピストであれば

誰しも無自覚の内に実践していることではないかと思います。

 

しかし、無自覚に行っているものを一つの明確な方法に落とし込み、

再現性を持たせるようにされているこの方法は素晴らしいと思います。

実際、私自身無意識の内に実践している方法はありましたが、

ここまで深く考え、明確に手順等を意識していた訳では無いので

どうしても再現性に乏しい部分もありました。

意識してこの方法を普段から実践できると臨床の中で

より結果を出すことができるのではないでしょうか?

 

新人のセラピストの方等是非参考に実践してみてください。

 

引用文献

中山ら,応用行動分析的技法を使用した座位訓練の効果,高知リハビリテーション学院紀要,11巻,2010

河野ら,応用行動分析学的介入により座位保持時間延長がみられた一症例,第42回日本理学療法学術大会抄録 Vol.34